風邪やインフルエンザなど、病原体が原因で起こる感染症。だれもが経験する病気ながら、なぜ発熱などの症状が出るのかといった、基本的なことは意外と知られていないかもしれません。今回は、感染症がどんな病気なのかをわかりやすくまとめます。
そもそも、感染するってどういうこと?
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入し、増殖することを「感染」と言います。感染すると、普通はからだに何らかの反応が起こります。たとえば、インフルエンザウイルスに感染すると高熱やだるさなどの症状が、水ぼうそうのウイルスに感染すると皮膚に赤い発疹やかゆみが現れます。このように、感染によってからだに異常が起こっている状態が感染症です。
感染しているにもかかわらず、症状が出ないこともあります。からだには侵入してきた病原体に抵抗する免疫システムが備わっており、これが機能することで発病しない(感染症にいたらない)ことも多いのです。こうした状態は「不顕性(ふけんせい)感染」と呼ばれます。不顕性感染でも病原体を他の人にうつしてしまうおそれがあり、症状がないから安心とは言えません。
感染症で熱が出る理由
感染症の代表的な症状が発熱です。病原体が体内に侵入すると、それを感知した免疫細胞が体温を上昇させる物質の産生を促し、脳の視床下部に信号が送られて体温調節が高温にセットされます。すると、骨格筋で熱が作られ、同時に皮膚の毛細血管が収縮して熱の発散が抑えられることで、体温が上がっていきます。
熱が上がるとからだがつらくなりますが、発熱は感染防御反応のひとつ。発熱によって病原体の増殖が抑えられるのです。そのため、感染症にかかって熱が出ても、むやみに解熱剤を使うのは避けるべき。熱が出ているということは、からだが病原体と戦っている証拠です。
ただし、発熱すると体力を消耗するので、タイミングをみて解熱剤を使うことは有効です。解熱剤が処方された場合は、医師の説明に従って服用するようにしましょう。
病原体はどこから体内に侵入するの?
私たちの身の回りには多数の病原体が存在しますが、体内に入り込むルートは限られています。なぜなら、からだは何層もの細胞からなる皮膚に覆われているので、病原体が通り抜けるのは困難だからです。そのため、多くの病原体は腸管や気道など、単層の上皮細胞からなる粘膜から侵入します。
特定の病原体の感染ルートはだいたい決まっています。人から人に感染するルートには、次の3つがあります。
飛沫(ひまつ)感染
咳やくしゃみ、会話などの時に感染した患者さんから出される飛沫(病原体を含む細かい水滴)を他の人が吸い込むことで感染するルート。インフルエンザや風しんは飛沫感染が主な感染ルートです。新型コロナウイルスも飛沫感染が主体と考えられています。
空気感染
病原体を含んだ飛沫の水分が蒸発し、より小さな飛沫核(ひまつかく)となったものを吸い込むことで感染するルート。
飛沫核は水分がなく軽いため、長い時間空気中を浮遊し、遠くまで飛んでいきます。そのため、感染した患者さんから十分な距離をとっていても感染してしまうのです。結核や麻しん、水ぼうそうは空気感染することが知られています。
接触感染
患者さんに直接触れたり、患者さんが使ったものに触れたりすることで感染するルート。病原体に汚染された食品を口にしたり、病原体が付着した手で口や鼻などの粘膜を触ったりすると感染します。新型コロナウイルスの感染ルートには、接触感染もあると考えられています。
感染する人としない人がいるのはなぜ?
インフルエンザの流行中でも、かかる人とかからない人がいるのはなぜでしょう?感染が成立するかどうかは、細菌やウイルスの病原性の高さや取り込んだ病原体の量、感染に対する抵抗力のバランスによって決まります。このバランスは人によって異なるので、感染症にかかる人とかからない人が出てくるのです。
侵入してきた病原菌を排除する免疫機能は、「免疫力」とも呼ばれます。健康であれば、生活習慣やストレスなどの影響で免疫力が多少変動しても、すぐに感染症にかかりやすくなるわけではありません。ただ、免疫力は加齢とともに低下することが分かっており、高齢になると感染症にかかりやすくなります。
感染のしやすさに最も大きく関係しているのは、その病原体に対する免疫が成立しているかどうかです。過去に同じ病原体に感染していたり、有効なワクチンを接種していたりして免疫ができている人では感染しにくいと考えられます。ワクチンが存在する感染症なら、ワクチンを接種することが一番の予防法です。
参考文献
1.本田武司(編): はじめの一歩のイラスト感染症・微生物学, 羊土社, 2011.
2.Calder PC, et al.: Br J Nutr 2002; 88: S165-176.
