免疫力を高める運動って、どんな運動?

食事と並んで、免疫力に大きな影響を及ぼす運動。運動の強度によって、免疫力を高めることもあれば、低下させることもあります。今回は、運動と免疫力の関係や感染症予防における運動の効果について分かりやすく解説します。

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激しい運動は免疫力を低下させる!?

運動が免疫機能にどのような影響を及ぼすかというテーマは、100年以上前から研究が行われています。1980年代に、「アスリートが行うような激しい運動は一時的に免疫力を低下させ、風邪のリスクを高める」という内容の論文がいくつも発表され、運動免疫学の分野がより注目されるようになりました。

一般的に、運動はからだにとって良いことですが、フルマラソンのような非常に激しい運動はからだに強いストレスを与えます。フルマラソンレース後の免疫機能を調べた研究では、免疫を担うNK(ナチュラルキラー)細胞やマクロファージ、Tリンパ球などの機能が大きく低下していたと報告されています。

日常的に激しい運動を繰り返し行っているアスリートでは、運動によるストレスに睡眠不足や精神的ストレスが重なり、特に免疫力が低下しやすい状態にあると考えられます。アスリートの感染症予防には、衛生面の対策だけでなく、トレーニングメニューや食事の管理、メンタルヘルスケアなどを含む総合的な対策が不可欠なのです。

毎日の適度な運動が免疫力を高める

では、アスリートではない普通の生活をしている人にとって、運動は免疫力にどのような影響を与えるのでしょうか?

中強度の運動(ウォーキングなど)が風邪の発生率を低下させるかどうかを調べた複数のランダム化比較試験では、ストレッチ程度しかしない人と比べて、1日45分のウォーキングを週5日行った人で風邪の発生率が30~50%減少したと報告されています。

こうした中強度の運動は、免疫を担う細胞や抗体の循環を促し、病原体に対する監視体制を強化することで、肺などの臓器を病原体の害から守ることにつながると言われています。

風邪以外にも、定期的な運動がインフルエンザや肺炎の発生率を減らす可能性があることが複数の研究で報告されており、新型コロナウイルス感染症を予防する上でも、運動は重要だと考えられます。

リモートワークが増えたことで、からだを動かす機会が減ってしまったという人は少なくないはず。感染症にかからないようにするには、手洗いや咳エチケットを実施するのと同じくらいに、定期的に運動して免疫力を高めることが大切です

免疫力の老化にも、運動は効果的!

免疫機能は加齢にともなって低下するため、高齢の方は特に感染症に気を付ける必要があります。最近の研究で、免疫機能の老化は栄養や運動、精神的ストレスなどの様々な要因の影響を受けることが分かってきました。つまり、同じように歳を取っても、個々のライフスタイルによって免疫機能の低下度合いは違ってくるのです。

運動は、加齢にともなう免疫力の低下にも良い影響を与えます。実際に、座りがちな生活をしている高齢者と比べ、ランニングなどのトレーニングを行っている同年代の高齢者ではNK細胞やTリンパ球の機能が高いという研究結果が報告されています。

[box class=”box32″ title=”免疫力の老化に対する運動の効果”][list class=”ol-circle li-accentbdr acc-bc-before”]

  1. ワクチンによる抗体価の上昇を増強する
  2. 好中球の食作用(病原体を取り込んで殺す作用)を強化する
  3. NK細胞の持つ「病原体に感染した細胞を排除する作用」を強化する
  4. 老化したTリンパ球の数を減らす
  5. Tリンパ球の増殖能を高める

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定期的な運動は免疫系に良い影響を与え、免疫力の老化を遅らせることができると考えられます。“現在”の感染症予防だけでなく、“将来”の感染症予防のためにも、毎日少しずつでもからだを動かすことが大切。仕事の気分転換に散歩に出かけるようにするなど、自分に合ったやり方で運動を習慣化しましょう。


参考文献
1.Silveira MP, et al.: Clin Exp Med 2020 Jul 29: 1–14. doi: 10.1007/s10238-020-00650-3 [Epub ahead of print]
2.Nieman DC, et al.: J Sport Health Sci 2019; 8(3): 201–17.

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