ウイルスや菌からからだを守るしくみとは

私たちの身の回りに無数に存在する微生物。微生物のなかには腸内細菌のように健康に役立つものがいる一方、病気を引き起こすものもいます。今回は、からだがどのように病原体の侵入を防ぎ、その害から守っているのかをわかりやすく解説します。

目次

病原体からからだを守るしくみの全体像

病原体から身を守るために、からだには大きく分けて3段階の防衛システムが備わっています。それぞれどんな役割を担っているのか、ここでは全体像をざっくり解説します。

第一関門:病原体を侵入させないバリア機構

からだの表面を覆う皮膚は、微生物の侵入を阻止する物理的なバリアになっています。また、からだの内側の粘膜は粘液で覆われており、病原体が付着しにくくなっています。

第二関門:侵入してきた病原体を無差別に攻撃

第一関門のバリアをかいくぐって病原体が体内に侵入すると、免疫システムが作動して病原体を排除します。まず働くのが、生まれながらにからだに備わっている「自然免疫」という免疫システム。免疫細胞が侵入してきた病原体を見つけ、無差別に取り込んで分解してしまいます。

第三関門:自然免疫では対応できない病原体を攻撃

2段階のバリアによって病原体の侵入の95%以上が防御されるものの、それらを突破してくる病原体もいます。それに対応するのが「獲得免疫」という免疫システムです。免疫細胞が個々の病原体の抗原を認識し、抗体を作り出すなどして狙い撃ちします

病原体の侵入を阻止する「バリア機構

ここからは、3段階の防衛システムについてもう少し詳しく解説していきます。

皮膚や粘膜上の粘液は、病原体に対する物理的なバリアですが、からだにはほかにもそうしたしくみが備わっています。たとえば、気道の表面の細胞には線毛と呼ばれる構造があり、病原体を喉のほうに掃き出すことで感染を防いでいます。また、排尿には病原体を物理的に洗い流すという役割があります。

やけどやケガなどで皮膚の物理的なバリアが壊れたり、アトピー性皮膚炎などの病気で皮膚のバリア機能が低下したりすると、感染が起こりやすくなってしまいます

物理的なバリアのほかに、からだには化学物質を利用したバリア機構も存在します。たとえば、胃から分泌される胃酸は、食べ物に付着した細菌を殺す作用があります。また、皮膚や粘膜からは抗菌作用のある物質が分泌されており、細菌の増殖を防いでいます。

病原体の侵入にいち早く対応する「自然免疫

物理的・化学的なバリア機構をかいくぐって病原体が体内に侵入してきた場合、自然免疫系と呼ばれる免疫システムがすぐにそれを感知し、病原体を攻撃します。自然免疫系は原始的な防御機構で、昆虫などの生き物にも備わっています。

免疫システムを担っているのは、血液中の白血球と呼ばれる細胞です。そのなかでも、自然免疫系で主体的に働くのがマクロファージや好中球です。これらの白血球は「食細胞」と呼ばれ、病原体に特徴的な成分を感知して病原体を見つけ出し、食べて殺してしまいます。

NK(ナチュラルキラー)細胞も自然免疫系の中心的な存在ですが、特にウイルス感染細胞やがん細胞などの異常がある細胞を排除するうえで重要な役割を果たしています

自然免疫に続いて働く「獲得免疫

自然免疫系ではカバーしきれない病原体には、獲得免疫系が対応します獲得免疫系の主役はリンパ球と呼ばれる白血球ですが、リンパ球に病原体の侵入を知らせ、活性化させる役目を担っているのは樹状細胞という別の白血球です。樹状細胞は獲得免疫系の司令塔のような存在なのです。

樹状細胞の司令を受け取るのは、リンパ球のうちTリンパ球という種類です。樹状細胞は病原体を取り込んで分解し、その断片を「抗原」としてTリンパ球に提示します。すると、Tリンパ球のなかでその抗原を認識できるものが活性化され、Bリンパ球という別のリンパ球を活性化する働きをするものや、感染細胞を見つけて排除する働きをするものなど、専門的な役割を担うTリンパ球に分化します。

Bリンパ球は、病原体を排除する作用を持つ「抗体」を作るリンパ球です。Bリンパ球にも特定の抗原を認識する機能があり、同じ抗原を認識するTリンパ球と出会うと活性化され、その抗原に特異的な抗体をたくさん作り出します

獲得免疫系のしくみを簡単にとらえるなら、からだにはそれぞれの病原体を攻撃する部隊が存在しており、病原体が侵入してきたら同じ部隊に所属するTリンパ球とBリンパ球が互いに協力しあって撃退するというイメージです。抗体は、Bリンパ球が作り出す武器と言えます

病原体を排除するしくみ=抗体と思われがちですが、私たちのからだに備わっている防衛システムはもっと複雑で巧妙なのです。身の回りに病原体が存在していても日々健康でいられるのは、この頼もしい防衛システムのおかげにほかなりません。

参考文献
1.本田武司(編): はじめの一歩のイラスト感染症・微生物学, 羊土社, 2011.

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